気体の混合問題でエネルギーの和が一定に保たれる理由は?

 

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オンライン物理塾長あっきー。高3秋から1か月で40点点上げ、センター試験では満点を取り、その経験を活かし塾講師として活躍。塾・学校・参考書の内容やカリキュラムに違和感を感じ数多くの高校生を救うため、大学2年生で「受験物理Set Up」を開設。多くの高校生が活用するサイトに発展し、現在「合格への道」で勉強法に特化した受験サポートを行う。

こんにちは。

こういう問題を見たことありませんか?

(セミナー物理2016 例題40)

この解説を見ると「A,Bの気体の内部エネルギーの和は保存される」

と書いてありますよね。

あ!これ気になってました。直感的にそんな気がしますが、しっかり理解したいです。

AI

もちろん、直感的に理解しても良いです。高校では説明できないことも多くありますからね。

とはいえ、できることならしっかり理解しておいた方が、初見問題でも使えます。

 

なので、今回はこの「エネルギーの和は保たれる」という理由を式で説明していきます。

 

気体を混合してみると・・・

圧力、体積、温度がそれぞれ\(P_A , V_A, T_A\)の気体A, \(P_B, V_B, T_B\)の気体Bがある。はじめは図のような容器で密閉されていて、コックが閉まっている。コックを開いて十分時間が経ったときエネルギーについてどんな特徴があるか考えよう。

 

熱力学ではまず二つの公式を考えますね。

状態方程式と熱力学第一法則です。

 

今回はエネルギーについて考えるので第一法則を考えるのが良いですね。

熱力学第一法則についてはこちらを確認してください。

熱力学第一法則はお金で考えろ!!問題で使える覚え方

それぞれの気体で第一法則を考える

それぞれの気体の変化を追ってみましょう。

コックが開くと圧力、体積、温度がそれぞれ変化するので、当然ながらエネルギーも\(U_A’\)に変化します。

熱力学第一法則より

\(Q_A = \Delta U_A + W_A\)

しかし、今回は熱のやり取りがありません。

そのため\(Q_A = 0\)となります

\(\Delta U_A + W_A = 0\)

 

同じようにBについても考えます。

Bも変化が起こりますが、体積は容器全体なのでAと同じ\(V\)で、時間が経つとAとBの温度は同じになるのでAと同じ\(T\)になります。

圧力はAと同じにはならないので\(P_B’\)としておきます。

同様に第一法則を立てると

\(Q_B = \Delta U_B + W_B\)

 

ですが、こちらも同じく\(Q_B= 0\)となるので

\(\Delta U_B + W_B = 0\)

という関係式が得られます。

 

ここで、\(W_A\)と\(W_B\)の関係を見てみましょう。

コックを開くとそれぞれの気体がぶつかっていきますよね。

図のように、

Aの気体がBの気体に仕事\(W_A\)をし、

Bの気体がAの気体に仕事\(W_B\)をしますね。

 

\(W_A\)はAがした仕事なので

\(-W_A\)はAがされた仕事になります。

マイナスを受けると向きが変わるんですね。

 

Aがされた仕事は図のようにBがした仕事\(W_B\)だと分かっていますから

こんな関係が見えてきます

\(-W_A = W_B\)

 

なるほど。互いに仕事をし合うから、足し合わせると0になる関係があるんですね。

AI

 

これを踏まえて先ほど導いた二つの式

\(\Delta U_A + W_A = 0\)

\(\Delta U_B + W_B = 0\)

を足してみると

\(\Delta U_A + \Delta U_B = 0\)

 

このようになります。(この足すという行為は「混合する」と関連していますね)

 

あ!だんだん見えてきました!!

AI

 

エネルギーの和=一定

 

改めて

\(\Delta U_A = U_A’ – U_A\)

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\(\Delta U_B = U_B’ – U_B\)

と置き換えると

\(U_A’ – U_A + U_B’ – U_B = 0\)

\(U_A’ + U_B’ = U_A + U_B\)

これはつまり

(混合後のエネルギーの和)=(混合前のエネルギーの和)

となってますね。

 

これで最初の解説通り「エネルギーの和は一定」ということが示せました。

 

混合後のエネルギーってどう表せる?

あれ?でも使い勝手悪くないですか?「混合前のエネルギー」は求めやすいけど「混合後のエネルギーの和」はちょっと面倒じゃないですか?

AI

 

確かにそうですね。

\(U_A’\)と\(U_B’\)をそれぞれ求めないといけないわけですが、それって面倒です。

できることなら一気に求めてやりたいですよね。

 

その方法をお見せしましょう。

内部エネルギーというのは単原子分子理想気体の場合

\(U = \frac{3}{2}nRT\)

と表せます。

 

そして状態方程式\(PV = nRT\)を使えば

\(U = \frac{3}{2}PV\)

とも表すことができます。

 

まず単原子分子で考えてみましょう。

このように変化する状況を考えると混合後のエネルギーの和はこう表せます。

\(U_A’ + U_B’ = \frac{3}{2}P_A’V + \frac{3}{2}P_B’V\)

つまり

\(U_A’ + U_B’ = \frac{3}{2}(P_A’ + P_B’)V\)

 

この\(P_A’ + P_B’\)に注目してみましょう。

これは混合後の「Aの圧力とBの圧力の和」

ですよね。これってつまり

混合後の全体の圧力ですよね。

 

つまり混合後の全体の圧力を\(P\)と改めて置けばエネルギーの和は

\(\frac{3}{2}PV\)

と表せます。

\(P\)は全体の圧力、\(V\)は全体の体積なので、これは

A,Bの気体を一つに見た「全体のエネルギー」となります。

 

したがって

(混合後のエネルギーの和)=(全体のエネルギー)

と言い換えることができるんですね。

 

ということで混合する場合

(全体のエネルギー)=(混合前のエネルギーの和)

と言い表すことができます。

 

具体的に式にしてみれば

\(\frac{3}{2}PV = \frac{3}{2}P_AV_A + \frac{3}{2}P_BV_B\)

\(PV = P_AV_A + P_BV_B\)

となりますね。

 

全体のエネルギーだったら問題文の情報から簡単に導くことができるので

これなら使い勝手がよさそうですね。

単原子分子じゃなくても使える

あれ?でも今は単原子分子という場合で考えたじゃないですか?ほかの場合だとダメになっちゃうんじゃ・・・

AI

良いところに気づきましたね。

今のは単原子分子の場合の話でした。

 

ですが、ラッキーなことにこれはどんな気体でも使える技なんです。

 

単原子分子理想気体では内部エネルギーは

\(U = \frac{3}{2}nRT\)

でした。

 

しかし、例えば二原子分子の場合

\(U = \frac{5}{2}nRT\)

となります。

気体分子の構造で式が変わってしまうんですね。

 

ですが、どんな構造であっても定積モル比熱\(C_V\)という定数を使って内部エネルギーはこう表すことができます。

\(U = nC_V T\)

単原子分子では\(C_V = \frac{3}{2}R\)

二原子分子では\(C_V = \frac{5}{2}R\)

となります。

 

この定数が変わるだけなので、特に問題なく

(全体のエネルギー)=(混合後のエネルギーの和)

は成り立つのはもちろんです。

 

そして次がポイントです。

 

先ほどこの計算を実際にやっていました。

\(\frac{3}{2}PV = \frac{3}{2}P_AV_A + \frac{3}{2}P_BV_B\)

\(PV = P_AV_A + P_BV_B\)

 

これを見ると\(\frac{3}{2}\)という部分がきれいになくなって、圧力と体積の情報のみになりましたよね。

この\(\frac{3}{2}\)というのは・・・・

 

そうです。

単原子分子の定積モル比熱の\(\frac{3}{2}\)ですよね。

 

このように、気体の構造で異なる値を持つ\(C_V\)が計算の途中できれいになくなってしまうんです。

二原子分子でも\(\frac{5}{2}\)が結局消えてしまうんですよ。

 

結局消えてしまうということは

どんな気体でも使える

ということなんです。

「単原子分子理想気体」という断りが問題文になくて、内部エネルギーを表せなくても、問題なく解けるってわけですね。圧力と体積の情報さえあれば可能ということなんですね。

AI

 

これで混合・分離の問題はバッチリ

いかがでしたか?

混合でできたことはもちろん分離をする際にも使えます。

なので、複数の気体を混ぜたり離したりする問題はもう「エネルギー=一定」というのが使えればOKということです。

他に解法なんていりません。これですべてに通用するので、後は問題で確認していきましょう。

 

まとめ

どんな気体であっても混合・分離のときは

(混合気体の全体のエネルギー)=(混合前の各気体のエネルギーの和)

が使える!

 

*\(U = nC_VT\)の\(C_V\)の値が気体によって異なり計算ができないように見えるが、計算途中で\(C_V\)が必ず消えるので、どんな気体でも使える!!

→つまり最強!!

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